先週号で脂肪細胞には白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類があることを述べました。その白色脂肪細胞は皮下脂肪として蓄積されやすいのですが、内臓の周囲にも内臓脂肪としてたまります。皮下脂肪に比べて内臓脂肪のほうがつきやすく、落ちやすいという特徴があり、また、年齢を重ねるほど内臓脂肪が多くなることがわかっています。
このごろ、内臓脂肪が増えた内臓脂肪型肥満がベースになり、高血圧や糖尿病、高脂血症が重なって、動脈硬化が進むメタボリックシンドローム(内臓肥満症候群)が話題になっています。
メタボリックシンドロームの診断基準では、まず、おへその周囲径を測って内臓脂肪の蓄積を推定します。男性85cm以上、女性90cm以上で、
- 糖尿病:空腹時血糖110mg/dl以上
- 高脂血症:HDLコレステロール40mg/dl未満、中性脂肪(トリグリセリド)150mg/dl以上、の一方または両方
- 高血圧:収縮時血圧(最高血圧)130mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)85mmHg以上
のうちの2つ以上に当てはまると、メタボリックシンドロームと診断されます。
なぜ内臓脂肪が多いと動脈硬化が進むのかはここ10年くらいでだんだん明らかになってきました。
脂肪細胞の役割はかつてはエネルギー源となる脂肪を蓄え、皮下や内臓に集まって体を形作り、衝撃を受けるクッションとなるだけだと考えられていました。しかし、1994年の「レプチン」の発見をきっかけに、ホルモンを分泌する、いわばひとつの臓器のような働きをすることがわかってきたのです。
レプチンは食事で摂るエネルギーが過剰になり、脂肪細胞が中性脂肪を蓄積したところで分泌されるホルモンです。脳の視床下部に働きかけて食欲を抑え、同時に、交感神経を刺激したり、甲状腺ホルモンの分泌を促したりして、エネルギー代謝を活発にします。そうして、肥満にならないように見張っています。また、レプチンは成長して適正な体重になったときに思春期を起こすのにも関わっています。
ところが、いったん脂肪細胞が巨大化したり、数が増えたりして肥満になると、レプチン自体の異常が起こったり、脳まで届く量が減ったりして、レプチンがたくさん分泌されているにもかかわらず、うまく働かなくなってしまうのです。そのうえ、レプチンが交感神経の働きを高める機能は維持されるため、高血圧が進みます。
しかし、食事や運動をコントロールして肥満を解消し、脂肪細胞が減ったり小さくなったりすると、過剰に出ているレプチンの量が減り、レプチンは本来の働きを取り戻します。
一方で、もともとレプチンの産生量が少なく、食欲の抑制が効かないため、肥満になる人もいます。
このようなレプチンの作用がメタボリックシンドロームにも関わっていると考えられています。
また、脂肪細胞からは、動脈硬化を抑制し、血糖値を下げる「アディポネクチン」(今週のキーワード参照)という物質が出ているのですが、内臓脂肪細胞が脂肪を蓄えて大きくなると、アディポネクチンの分泌が減ります。逆に内臓脂肪細胞が小さくなるとアディポネクチンが増加することも明らかになっています。
ほかにもインスリンの作用を邪魔して血糖を上げるホルモン「レジスチン」も、とくに内臓脂肪の脂肪細胞から分泌されています。
こうして見ると、内臓脂肪が悪さをすること、そして内臓脂肪を減らすと体にいいことがわかりますね。メタボリックシンドロームになる前に、そしてなり始めたら早い段階で、運動や食事をコントロールして内臓脂肪を減らすことです。
あじが旬を迎えています。生まれた場所から遠く離れない地付きのあじは5月ごろから夏にかけておいしくなりますが、これとは別に日本近海の暖流を春から夏にかけて北上し、秋から冬に南下する回遊するあじもあり、こちらは1年中出回っています。養殖ものや輸入ものもあります。
スズキ目アジ科の海水魚で、体の側面に「ぜいご」「ぜんご」と呼ばれる小さくて堅いトゲ状のうろこが1列に並んでいるのが特徴です。
普通、あじといえばマアジをさしますが、ほかにもシマアジ、マルアジ、ムロアジ、メアジなどの種類があります。
マアジにはキアジとクロアジがあり、地付きのものはキアジが多いようです。地付きのあじは背が青く、おなかが金色がかっています。一方、回遊魚は背が黒く、おなか側は白っぽいのが特徴で、体や尾びれが丸く、脂肪が多めです。
大分県佐賀関町の漁場で一本釣りされる「関あじ」はマアジの仲間。瀬戸内海と太平洋の潮流で育ち、頭が小さく、身が肥えて、身に弾力があります。あじの中でも高級品として知られています。
体の真ん中に黄色い縞があるシマアジはおすしに使われる高級魚。マルアジ、ムロアジは干物などの加工品にもなります。くさやにはクサヤムロというムロアジの近縁種もよく使われています。
あじがおいしいのは、イノシン酸をはじめとするアミノ酸が豊富だから。栄養もたっぷりで、タンパク質のほか、カルシウムやビタミン類も含んでいます。EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)のような多価不飽和脂肪酸が多く、悪玉コレステロールを下げ、血管や脳を丈夫に保ちます。また、血圧やコレステロール値を下げるタウリンもあります。
水分が多く、鮮度が落ちやすいので、新鮮なものを選び、早く食べましょう。ぜいごを含め、うろこが整っていてくっきりと見える、体が青光りしている、ひれやエラがピンとしていて身が張っている、目が澄んでいて盛り上がっている、というのが鮮度のいいものを見分けるコツ。体に光沢がなく、目の周囲が赤黒く、エラから出血しているものは避けます。
ぜいごは尾の手前に包丁を入れ、軽く上下に動かしながら身に添わせてそぎ取ります。うろこも尾側から頭に向かって落とします。
刺し身やたたき、おすし、マリネにして生で食べるならば、ネギやしょうがなどの薬味や柑橘類の絞り汁を添えるといいでしょう。あじのたたきに小口切りのねぎとみそを混ぜ、細かくたたいた「なめろう」は房総の漁師料理として有名です。また「なめろう」を貝殻に入れて焼く「さんが」も美味。塩焼き、唐揚げやフライ、南蛮漬け、煮付けなどもおいしいですね。
干物は表面が透き通り、つやがあるものを。1枚ずつラップで包んで冷凍すると日持ちします。自家製の干物を作るなら、身を開いてよく洗い、海水程度の塩水に20〜40分ほど浸けた後、風通しのよい場所に干すといいでしょう。











